モンキー・ビジネス

あれは４週間前の金曜日、まだボクが優しい心を持っていた頃のこと。

沙知代がボクに言った。
「あの～、プリクラ一緒に撮ってもらっていいですか？」
まだ優しい心をもっていた頃のボクは何の気無しにＯＫを出し、
バイト先のホームセンター内にあるプリクラで沙知代とふたり、フレームに納まった。

ボクに彼女様という彼女がいることはバイト内の誰もが知っている。
散々彼女様の話で笑いをとっているからだ。
それはもちろん沙知代も知っているわけで
プリクラも単にバイト仲間として撮りたがっているのだと勝手に解釈したのだ。
そして土、日とバイトを休んで月曜にバイトに出勤すると
バイト内に不穏な噂が流れていた。

ボクが金曜の夜、バイト上がりの沙知代をカラオケに誘ったというのだ。
そしてボクと沙知代は暗い密室でカラオケして盛り上がった後、
そのカラオケ屋のロビーに置いてあるプリクラで一緒にツーショットした。ということになっていた。

ボクは直感した。
ハメられた、と。
自分には彼女がいると思って安心していたけれどアイツにはそんなこと関係なかったようだ。

案の定、噂を流した張本人は沙知代だった。

沙知代は噂を流す際、プリクラを携帯の裏側に貼って証拠を提示してきたそうだ。

さらに話を聞くと、カラオケ内でボクが沙知代にチューを迫ったけれど
沙知代は「ガトーさんには彼女がいるじゃないですかぁ」と拒んだことにされていた。


体中の血が逆流するのを感じた。
初めて感じた感情。これが恋？今までしてきた恋は偽者だったのか！
もしボクが北斗神拳を使えたなら確実に死兆星を見せてやっていただろう。
ボクが北斗神拳の伝承者に選ばれなかったことを幸運に思うがいい。